表情・ポーズの意味を知る――見得・隈取・荒事と和事

役者絵の人物は、なぜあのようなポーズや表情をしているのでしょうか。そこには歌舞伎の演技の型や役柄の約束事が込められています。意味を知れば、一枚の絵から芝居の熱気が伝わってきます。

Poses & expressions in actor prints follow the conventions of kabuki acting, such as mie poses, kumadori makeup & the aragoto / wagoto styles.

■ 見得 / Mie Poses

見得とは、芝居の見せ場で役者が動きを止め、にらみや決めのポーズをとる演技です。役者絵の多くは、この最も印象的な瞬間を切り取っています。寄り目になったにらみや、手足を大きく広げた姿勢は、見得の瞬間を描いたものと考えられます。

■ 荒事と和事 / Aragoto & Wagoto

江戸で発達した荒事は、超人的な英雄を勇壮に演じる様式で、隈取や大きな動きが特徴です。一方、上方で発達した和事は、恋に悩むやわらかな二枚目を演じる様式です。上方浮世絵には、和事のしなやかな姿を描いた作品も多く見られます。

演技・役柄特徴役者絵での見分け方
荒事勇壮で超人的隈取、大きく張った手足、力強い見得
和事やわらかな色男やさしい表情、しなやかな姿勢
実事分別のある立派な人物落ち着いた表情と姿勢
捌き役事件を見事に解決する役威厳ある静かな佇まい
敵役・実悪悪人の役藍隈や鋭い目つき
女方女性の役衣裳・髪型・化粧で娘・女房などを演じ分ける

■ 隈取の色 / Colors of Kumadori

隈取は、時代物で役柄の性格を誇張する化粧です。赤は正義感にあふれた勇壮な役、藍(青)は大悪人、茶色は鬼や妖怪など人間以外の役に用いられました。照明が十分でなかった当時の劇場でも、ひと目で役柄がわかるための工夫でした。

  • 同じ赤の隈でも、鯰隈のように滑稽な敵役に用いるものもあり、英雄役とは形が異なります。
  • 手の形や指先の表現にも注目してみましょう。女方と立役では手の描き方が大きく違います。

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